top of page

父の背中から学んだ現場主導の組織論。高知食糧が描く地域の未来

  • 4 時間前
  • 読了時間: 9分



高知県を拠点に設立から74年目を迎える高知食糧株式会社をはじめ、サニーグループとして多角的な事業を展開する山崎大輔代表。29歳で取締役に就任し、32歳で事業を継承した山崎さんは、先代のトップダウン型の経営から、一人ひとりの強みを活かすフォロワーシップ型の組織へと会社を大きく変革してきました。


現在では350名もの従業員を抱えながら、誠実さと現場へのリスペクトを胸に走り続ける等身大の経営ストーリーに、戦う経営者図鑑公式インタビュアーで、元フィールドホッケー選手の中村航司が迫ります。



スポーツを通じた地域とのつながり

中村: 山崎さん、本日はお忙しい中お時間をいただきありがとうございます。私は富山県出身なのですが、実は先日富山観光大使に任命いただきまして、地方を盛り上げるというテーマでも今日はお話を伺えることを楽しみにしておりました。


山崎さん: こちらこそよろしくお願いします。実は先日、富山県の企業の方が高知にお越しになられて、いろいろと情報交換をさせていただいたり、坂本龍馬のゆかりの地を回ったりしていたところだったんですよ。


中村: そうだったんですね。ご縁を感じます。ちなみに山崎さんご自身も何かスポーツはされていたんですか。とてもスタイリッシュで、何かスポーツマンのような爽やかな空気感を感じるのですが。


山崎さん: 僕は中学校からずっとバドミントンをやっているんですよ。今は会社として、ミックスダブルスの選手、通称ワタガシペアの渡辺勇大くんのスポンサーにも入って応援している状態です。


中村: なるほど、バドミントンだったんですね。スポーツを通じた支援もされているということで、本日は経営者としての歩みはもちろん、そうした独自の視点についても深くお伺いできればと思います。



先代の背中を見て学んだ経営のリアル

中村: 山崎さんは32歳でいまの会社を継承されたとのことですが、私も現在ちょうど32歳なので、当時山崎さんがどれほどのものを背負い、どう向き合ってこられたのかに非常に興味があります。改めて、100億円企業を目指す経営の原点について教えていただけますか。


山崎さん: 僕が高知食糧という会社に着任したのは29歳のときでした。それまでは同じグループ内にあるカーディーラーやスーパーマーケットの業務に携わりながら、営業や企画、財務などの仕事をしてきました。父が代表をしていたのですが、直接一緒に経営に携わったのは高知食糧に入ってからが初めてだったんです。だから、代表になるまでの約3年半は、父の実務をすぐ横で見ながら会社の経営というものを学んでいた期間でした。


中村: それまでは父親としての一面しか見ていなかったところから、経営者としての姿を直近で見るようになったのですね。経営者としてのお父様は、どのような方だったのでしょうか。


山崎さん: 非常にトップダウン型で、意思の強いマネジメントをする人でしたね。朝令暮改も多かったですし、アイデアが出たらすぐに実行したいというタイプでした。グループの事業は食品スーパーやコンビニ、外食など生活に密着するものが多いため、父は誰よりも社会のトレンドや消費者の悩みに敏感でした。


たとえば、スーパーの惣菜のアジフライを食べたときに、美味しいかどうかよりも骨が引っかかることが気になり、骨抜きのアジフライを作れないかとすぐに現場に指示を出すような人でした。食べる方の不満を解消することが豊かさにつながるという理念を持っていたので、そう思ったことはとにかく早く実行するという旗振りをしていたんです。


中村: まさに職人気質というか、お客様への熱い思いを感じますね。しかし、そのスピード感を持ったトップダウン経営から、山崎さんご自身の代で地域に根ざした新しい経営スタイルへと変革されていったのですよね。そこにはどのような葛藤や気づきがあったのでしょうか。



240名との対話から生まれたフォロワーシップ

山崎さん: 父の思いは立派でしたが、トップダウンが強すぎると、現場に目標や意図が共有されないまま、とにかく早くやれというプレッシャーだけが伝わり、パワハラのようになってしまうリスクがあると感じていました。早く進められることと、時間のかかることがありますよね。メンバーからすれば、すべてを全力で早くやれと言われると苦しくなりますし、それではパフォーマンスも上がりません。


僕が代表になるにあたって強く感じていたのは、人や物、お金が十分に生かされていないということでした。特に人の部分において、シンプルに強みを伸ばすということをしないと成果にはつながりません。メンバー自身が自分の強みを理解していなかったり、逆に弱みの部分の仕事を任されていたりするケースがよくあったんです。


中村: スポーツの世界でも、適材適所ではないポジションで苦しむ選手はたくさんいます。その課題に対して、具体的にどのようにアプローチされたのでしょうか。


山崎さん: 代表になるまでの期間、当時240名ほどいたメンバー全員と一人ひとり直接話をしました。何が好きで何が嫌いか、何が得意で何が不得意か、なぜその仕事をしているのか。そういった一人ひとりの価値観のすり合わせをずっとやり続けていたんです。


中村: 240名全員とですか。それは凄まじい労力ですね。トップダウンではなく、まさに人に寄り添うサーバントリーダーやフォロワーシップ型の経営スタイルですね。


山崎さん: そうですね。僕は今ある土台を使ってレバレッジをかけたほうがうまくいくという感覚でやっています。240人もの規模の事業を僕一人でできるわけがありません。


だから、方向性と外してはいけない重要なポイントだけを共有したら、あとは現場のメンバーにお願いして自由にやってもらうスタイルをとっています。一番会社にとってきつそうな問題は僕が行って対処するので、あとは現場で頼みますと任せているんです。



1億5000万円の赤字を乗り越えた愚直な現場力

中村: とはいえ、経営を引き継いだばかりの頃は、抱え込んでしまうような大きなプレッシャーや危機もあったのではないでしょうか。


山崎さん: 一番大変だったのは、着任当時に大きな赤字があったことですね。当時は過剰な投資が重なっていて、売上が48億円ほどある中で、営業赤字が1億5000万円ほど出ていました。特に愛媛にペットショップを2店舗同時に出店したタイミングだったのですが、まだノウハウが構築しきれていない状態での出店だったため、それをどう回収して黒字化していくかが最初の大きな壁でした。


中村: 1億5000万円の赤字からのスタートですか。さまざまな選択肢がある中で、どうやってその苦境を乗り越えていったのでしょうか。


山崎さん: 振り返ってみると、何か特別なテクニックがあったわけではなく、目の前のことを一つひとつ誠実にやるしかありませんでした。お店が清潔に保たれているか、いらっしゃいませとしっかり挨拶ができているか、商品がきれいに陳列されているか。そういった当たり前のことを愚直にやり続けたんです。


その結果、月に1回来てくれていたお客様が2回来てくれるようになり、リピートが積み重なっていきました。目標設定も、焦ってすぐに黒字化させるのではなく、2年半かけてなんとかしようと時間軸を長く設定して、現場と一緒に取り組んでいきました。


中村: 現場を信じて、当たり前のことを徹底する。その誠実さがお客様に伝わったのですね。先ほどのフォロワーシップのお話にも通じますが、現場の人たちがやりがいを持てるように工夫されていることはありますか。


山崎さん: 現場のメンバーには、自分たちの手元の作業が何につながっているのかを一緒に考えるようにしています。たとえばミスがあったときにただ怒るのではなく、これをしてしまうと買ったお客様が悲しんでしまうよね、どうすれば防げるだろうかと話し合います。


誰かに迷惑をかけようと思って仕事をしている人はいないので、顧客視点を共有することで、自分の仕事の意味が理解でき、自走してくれるようになります。



価値の総和としての売上と、次世代への継承

中村: 山崎さんのお話を伺っていると、継承者としての重圧よりも、事業と地域をどう豊かにしていくかという前向きな責任感を強く感じます。今後の目標や、社会に届けていきたい価値について教えてください。


山崎さん: 74年間この地域で商売をやらせてもらっていることへのありがたさを痛感しています。僕自身もこの会社のおかげでご飯を食べてこられたので、その信頼を壊さないことが一番大切です。


グループ全体で売上が伸びているということは、それだけお客様に価値を提供できている証拠だと思っています。売上はお客様へ提供した価値の総和であり、感謝の対価です。だからこそ、この価値をどうやって続けていけるかを考えなければなりません。


中村: 既存の事業を守るだけでなく、新たな挑戦も視野に入れているのでしょうか。


山崎さん: 高知の市場は縮小していく傾向にありますが、その分新しい課題も生まれています。たとえば、高知で99パーセント作られている香り米という日本特有のお米があるのですが、これを海外の方に食べていただく機会を作れば、新しい市場が広がる可能性があります。


僕はこれまで先代が作ってくれた10を100にするフェーズをやってきたので、ゼロからイチを生み出すことにはまだ手探りな部分があります。しかし、足元をしっかりと固めながら、既存のアセットを掛け合わせて新しい可能性を探っていくことが、これからの自分の役割だと思っています。


中村: 日々のお忙しい中で、どのようにご自身の思考を整理し、バランスを保たれているのでしょうか。


山崎さん: 意図的に計画を立てるのは得意ではないのですが、振り返りの時間は大切にしています。シャワーを浴びているときや、寝る前に呼吸を整えながら今日一日を振り返ったりしますね。あとは映画や漫画を見て、ぼーっと情報を入れる時間を作ると、意外と考えていたことと結びついて思考がリセットされることが多いです。


中村: 自然体でありながら、非常に深く自己と向き合われているのがわかります。山崎さんのような誠実で現場を愛する経営者が地域を牽引していく姿に、多くの方が勇気をもらえるはずです。本日は大変貴重なお話をありがとうございました。


山崎さん: こちらこそ、ありがとうございました。




編集後記

240名もの従業員一人ひとりと対話し、現場の声に耳を傾ける山崎さんの姿勢には、トップダウンにはない温かな強さがありました。1億5000万円という巨額の赤字を前にしても決して焦らず、挨拶や清掃といった基本を徹底して立て直したエピソードからは、お客様と従業員への深いリスペクトが伝わってきます。


売上は提供した価値の総和であると語る山崎さんの等身大の経営哲学は、変化の激しい時代において、企業がどう地域や社会と共存していくべきかという本質的なヒントを与えてくれました。



ゲスト:山崎大輔(高知食糧株式会社 代表)

インタビュアー:中村航司(戦う経営者図鑑公式インタビュアー 一般社団法人日本スポーツコミュニティ協会 代表理事 元フィールドホッケー選手)


コメント


bottom of page