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職人が誇れる世界へ。屋外空間の価値を社会に問う|ハンワホームズ株式会社

11 分前
読了時間: 8分


大阪・泉南市に本社を構えるハンワホームズ株式会社。「屋外空間」を軸に事業を広げ、2024年11月にTOKYO PRO Marketへ上場、2025年11月には名古屋証券取引所ネクスト市場へ市場変更を果たしました。


舵を取るのは、代表取締役社長の鶴厚志さん。元プロボクサーの長野憲次が、モチベーションゼロで飛び込んだ現場で見つけた原点と、「資本合理性では測れない価値」を社会に届けたいという事業の大義について伺いました。



モチベーションはゼロだった、社会人一年目

《長野》: 本日はよろしくお願いします。鶴さんは2008年、大学を卒業してすぐに入社されたんですよね。


《鶴さん》: そうですね。父がやっていた会社に僕が入って、二人三脚でやっていったという形です。中小企業は社長が考えて社長が自ら動くケースが多いじゃないですか。そこを、父が考えて僕が動くという流れをつくれたのは良かったのかなと思います。


《長野》: それは意図してつくられた形だったんですか。


《鶴さん》: いえ、そんな考える力は20代の僕にはなかったですよ。父が突然の病で倒れて、入院していた時期があったんです。だから自分が動かざるを得なかった、というのが正直なところです。


ただ、誰かが思考したものを具現化していく経験を20代でできたのは、すごく役に立ちました。


《長野》: 入社当時は、どんな気持ちで仕事に向き合われていたんですか。


《鶴さん》: 正直に言うと、全然高くなかったです。内定も決まっていたのに辞退して、3月の後半に入社が決まったので。卒業してすぐ現場に出るというのは想像していなかったんですよ。やるしかないな、という感じでしたね。



「頭のいい人だけが勝つ世の中」を変えたかった

《長野》: そこから気持ちが変わっていったきっかけはありましたか。


《鶴さん》: 徐々に、ですね。職人さんたちと一緒に物事を考えるようになって、彼らが評価される世界をつくりたいと思うようになったんです。アスリートのセカンドキャリアの話とまったく一緒で、頭のいい人だけが勝つ世の中を、なんとか変えたいなと。


《長野》: そう考えるようになった原体験はありますか。


《鶴さん》: 建築の現場に入ってみて、世の中から見られているほど悪くない世界だな、と思ったんですよ。誤解されやすい世界ですし、夏は暑くて毎日くたくたになる。でも、身体を動かして、世の中のためになって、仲間と会話をして。意外と悪くないなと思ったんです。


彼らはすごい技術を持っているし、「俺はこんなふうにやりたいんだ」という思いもある。でも、それを表現する場がない、表現する相手がいない。そこに気づきはじめたんですね。伝わらないから、こちら側にも勝手な思い込みが生まれて、そこに溝ができていく。そういういびつな世界観は嫌だなと思うようになったんです。


自分が成長すれば発注する側の人たちとも話すようになる、というのは当時から想像していました。だったら、現場の人の気持ちも理解しながら事業を進めていきたい。それが徐々に固まっていったんです。



資本合理性では測れない価値を、社会に届ける

《長野》: 上場という節目を迎えられました。その先に描いているものを教えていただけますか。


《鶴さん》: 僕らには、この産業を世の中に認知させたいという思いがあるんです。屋外空間創造事業というものの社会的価値を伝えていきたい。それが僕の大義であり、人生をかけたミッションですね。


ミッションを達成するための手段は無限にあります。でも、皆さんに評価されるのは手段がうまくいったとき。僕からすると、列車が走る線路を今つくっているだけなんですけどね。

《長野》: 屋外空間創造事業について、もう少し具体的に教えていただけますか。


《鶴さん》: たとえば大阪の梅田に、都心のど真ん中なのに芝生の広場と水辺のある大きな公園ができましたよね。坪単価がとんでもなく高い土地です。目先のリターンだけを考えるなら、別の使い方もあったはずじゃないですか。


でも、芝生を敷いたことで、ものすごくたくさんの人が集まっている。人は生きることに前向きになれるし、その滞在が周辺の商業や文化にもつながっていく。空間そのものの価値が上がるんですよね。


去年の万博にも、会場の中に静かな森のような場所がありました。効率だけで考えれば、なくても成立する場所です。でも、あったほうが確実にハッピーなんです。


資本合理性では評価しきれない世界が、空間づくりには一定ある。その分野を社会で評価できるようにしていこう、というのが僕らの事業です。


《長野》: めちゃくちゃいいですね。みんな脳みそがいっぱいいっぱいで余白がないので、都会の真ん中に自然があるとホッとしますよね。


《鶴さん》: スポーツも似ていませんか。僕らはJリーグのクラブを応援させていただいていますが、広告効果という物差しだけでは語りきれない取り組みなんです。


知り合いが会社に気づいてくれたり、お客さんにチケットをお渡しできたり。収益だけではないつながりが生まれる。


僕らのランドスケープも「あったらいいよね」と言われながら、なかなか評価されてこなかった。スポーツも、必要だとみんな分かっているのに経済的価値に置き換えづらい。すごく近いなと思っているんです。



負けの乗り越え方と、自分を俯瞰する習慣

《長野》: 失礼ながら、勝手に抱いていたイメージと違いました。すごく情に厚い方なんですね。


《鶴さん》: 情に厚いですよ、僕。役員に権限委譲していきながら、できるだけ僕の情が介入しない形にしようとは思っています。でも、やっぱり人間なので出ますよね。


フェアであろうとは常に思っていますが、公平って本当に難しい。越えられないかもしれない壁も出てきますから、不安は常にあります。だから自分のメンタルヘルスケアがすごく大事ですよね。僕の場合は、思ったことをずっとノートに書いているんです。


誰にも見せないので、ネガティブなことも吐き出す。嫌なことがあったら書き出して、数日後に見返して、無理やりメタ認知をしている感じですね。


《長野》: それ、スポーツと一緒です。自分のプレーは自分では分からないけど、俯瞰して見られる人はやっぱりトップに行くんですよ。


《鶴さん》: 本当に一緒ですよね。

学生時代はサッカーばかりやっていましたけど、本気でやっている人はみんな勝ちたいのに、勝てるのは一チームだけじゃないですか。つまり、常に負ける。


経営も同じで、ほぼ負けで、悔しい思いをいっぱいして、最後にどこかで一筋の光がある。負けたときの乗り越え方が身についているかどうかは大きいです。自己分析の精度と、周りから今の自分がどう見られているか。そこをコントロールできるかどうかだと思うので、ひたすらそれをやっています。



事業承継という、もう一つの理由

《長野》: 上場を目指された背景には、大義以外の理由もあったのでしょうか。


《鶴さん》: パーソナルな話で言うと、事業承継、特に父から引き継いだ後の問題がすごく大変でしたし、辛かったんです。


やっぱり親子で揉めるんですよね。経営がしんどいときは一緒に立て直そうと頑張れるんですけど、良くなってくると揉めるんですよ、人って。


そうなったときに、このままでは難しいなと思ったので、会社を公器にして、経営者は僕が選ぶのではなく株主が選ぶというフェーズに持っていきたかったんです。人間なので、合理性だけでは動かないですから。大義と感情、その両面でやっています。



選択肢がないところから、道はつくれる

《長野》: この記事の読者には、20代後半から30代半ばの元アスリートも多いんです。やりたいことが分からないという人に、アドバイスをいただけますか。


《鶴さん》: 小さい頃に、自分の意思で野球やサッカーやボクシングをやりたいと決めた人って、どれだけいるんだろうと思うんです。親御さんの導きがあって、若いうちにレールがある程度決まっている人が多いんじゃないかなと。僕も経営に入ったのは20代で、選択肢がない状態から始まりました。


でも大人になると、自分には選択肢があると感じるようになって、その選択が正しいか間違っているかというジャッジの中で生きていく。だから壁にぶつかると、「この選択が間違っていたんだ」と思ってしまうんですよね。


《長野》: 確かに、すぐに辞めてしまう人が多い気がします。


《鶴さん》: 大事なのは、目的と手段を取り違えないことだと思うんです。自分がどうやりたいかを考えて、自分の力をどうつけて進めていくか。それが全てなのかなと。今の風潮に流されずに頑張っていただきたいですね。


《長野》: 僕が一番刺さりました。本日は本当にありがとうございました。



編集後記

取材前に勝手に描いていたのは、上場企業を率いる合理性の塊のような経営者像でした。しかし最初に出てきたのは、「モチベーションは全然高くなかった」という飾らない言葉です。


父の病気をきっかけに、選びようのない場所から始まった社会人生活。その現場で鶴さんが見つけたのは、技術も思いも持っているのに、それを表現する場を持てない職人さんたちの姿でした。


「頭のいい人だけが勝つ世の中を変えたい」という一言に宿るのは、外から評価されにくい仕事に光を当てたいという静かな意志です。その視点は、数字に置き換えづらい価値をどう社会に届けるかという事業の大義にも、まっすぐつながっていました。


誰にも見せないノートに感情を吐き出し、数日後に読み返して自分を俯瞰する。情に厚い自分を認めたうえで、仕組みで補おうとする。その往復こそが、鶴さんの強さの正体なのだと思います。選択肢がないところから始まった人にこそ、自分で道をつくる力がある。そう信じさせてくれました。



プロフィール

鶴 厚志(つる あつし) ハンワホームズ株式会社 代表取締役社長。2008年に同社へ入社し、2020年に事業承継により代表取締役社長へ就任。屋外空間を事業ドメインとした「空間創造」を軸に事業を展開。2024年11月にTOKYO PRO Marketへ上場、2025年11月に名古屋証券取引所ネクスト市場へ市場変更。


長野 憲次(ながの けんじ) 株式会社アスリート式 代表取締役。元プロボクサー。20歳でデビューし24歳で引退。自身のセカンドキャリアでの葛藤を原体験に、アスリートのキャリア支援事業を展開する株式会社アスリート式を設立。「戦う経営者図鑑」公式インタビュアー。

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