誰もが挑戦できる社会へ_突然のバトンタッチから見出した大切な使命

株式会社D&Iの代表取締役を務める小林鉄郎氏。先代社長の急逝により、突然会社のトップに立つことになった小林氏が、いかにして社員と向き合い、自分自身の経営の軸を確立して上場を果たしたのか。
社会課題解決とビジネスの両立を目指す熱い経営哲学と、その原動力となる幼少期の教えについて、元プロボクサーの長野憲次が迫ります。
《長野》: 本日はお忙しい中、ありがとうございます。事前に経歴を拝見して驚いたのですが、小林さんとは1984年生まれで全くの同い年なんですよね。
《小林さん》: そうなんです。1984年生まれの同い年ですね。よろしくお願いします。私は石川県の金沢出身で、神戸の大学に進学してから東京に出てきました。
《長野》: 私は神戸市ともお仕事をさせていただいてることもあって、すごくご縁を感じています。私は元プロボクサーなのですが、小林さんも学生時代からスポーツやダンスをされていたそうですね。
《小林さん》: はい。バスケットボールと、ストリートダンスのポップというジャンルをやっていました。ロボットダンスのような動きをするジャンルです。
実は先日、3年ぶりに社員全員が集まるオフラインのキックオフイベントがあったのですが、そこで久しぶりに社員の前でダンスを披露したんですよ。
《長野》: 社長自ら踊られたんですか。それは絶対に盛り上がりますよね。
《小林さん》: キックオフの実行委員から、経営陣こそもっと盛り上げてほしいというお題をいただきまして。役員4人で「新しい学校のリーダーズ」の曲に合わせて、ガチの振り付けとネタを仕込んで踊りました。
《長野》: ほかの役員の方もダンス経験者だったのですか。
《小林さん》: 管理管掌役員の谷口は、18歳の頃に出会ったダンスサークルの親友なんです。彼と私は経験者でしたが、あとの2人の役員はまったくの素人でした。
それでも朝8時に集まって役員4人で猛練習して、本番はすごく盛り上がりましたね。
《長野》: トップ自らが本気で取り組んで場を盛り上げる、本当に素晴らしいカルチャーですね。
先代の急逝と悲しみを越えた責任感
《長野》: そうした素晴らしい組織風土は、やはり以前から根付いていたものなのでしょうか。
《小林さん》: そうですね。大元は先代と十数年かけて育んできたものです。誰もが挑戦できる社会をつくるというミッションや、義務から戦力へ、人生に選択肢をというバリューは、先代の頃からずっと変わらず大切にしています。
私が代表に就任してからは、潜在労働者の活躍プラットフォームを構築し、社会課題を解決するという新たなビジョンを作りました。
《長野》: 理念を社内に浸透させるために、どのような工夫をされているのですか。
《小林さん》: 毎月の全社会でミッションやビジョンを必ず共有しています。また、新しく入社した方には、月に2回、私自身が直接時間を取って社長研修を行っています。
会社の歴史や大切にしていること、そして未来の展望を直接自分の言葉で伝えて、会社への理解を深めてもらうようにしています。
《長野》: 社長ご自身の言葉で直接聞けるのは、新入社員の方にとってすごく心強いと思います。小林さんは先代の社長の急逝で、代表に就任されましたが当時の心境はどのようなものだったのでしょうか。
《小林さん》: 亡くなったという連絡を受けた瞬間は、本当に時間が止まったかのような感覚でした。あまりにも急で予想もしていなかった報告に、最初は何を言われているのか理解できませんでした。
そして、悲しみの感情と共に「今この瞬間から、私が意思決定をしないと動かない会社になってしまったんだ」と大きな責任感を感じました。最大の経営リスクが降りかかってきたことを理解し、なんとかしなければいけないという思いでした。
《長野》: 急なことで不安も大きかったと思います。ご自身が代表をやるしかないという決断だったのですね。
《小林さん》: 先代は本当にカリスマ的な存在で、人に会社が紐づいているような状態でした。だからこそ、先代がいなくなることで社員が離散してしまうのではないかという恐怖はありました。
ですが、結果的にはほぼ全員が残ってくれて、先代の遺志を継いで頑張ろうと団結してくれたんです。それが本当に大きな救いでした。横にいてくれた親友の役員や家族の支えも大きかったですね。
経営の軸を定めた半年間の熟考とスピード上場
《長野》: 代表に就任されてから、経営を進める上で特に意識されたことはありますか。
《小林さん》: 先代の言葉を枕詞にして経営をしてはいけないと強く思いました。先代の思いは当然継承しますが、自分がなぜ人生をかけてこの会社の代表になるのか、自分自身が何を成し遂げたいのかという根っこの部分を明確にしなければ、社員はついてきてくれないと気づいたんです。
《長野》: ご自身の言葉と覚悟が必要だと感じられたのですね。
《小林さん》: はい。そのため、就任直後の7月に予定していた年間方針の発表を半年間延期させてもらいました。
社員には今の事業を続けながら少し待ってほしいと伝えて、その半年間で自分の軸や未来のビジョンを徹底的に考え直したんです。あの期間があったからこそ、今もまったく軸がぶれずに経営できているのだと思います。
《長野》: その後、計画からわずか1年半というスピードで上場を果たされました。一度は上場を断念した時期もあったと伺っています。
《小林さん》: 先代の時代に一度上場を目指したのですが、過剰投資やコロナ禍が重なって断念した経緯がありました。私が代表になった直後は、まずは会社を存続させることが最優先で上場は白紙でした。
ですが就任から1年経って、上場することで社会的な信用力を高め、採用力や取引先からの信頼を強化できると考えるようになりました。潜在労働者の活躍プラットフォームというビジョンを、より多くの人や企業に届けるための手段として、再び上場を意識し始めたんです。
《長野》: どのような戦略で上場を実現されたのでしょうか。
《小林さん》: 市場をプロマーケットに変更したことが大きかったです。プロマーケットであれば監査証明が1期で認められ、スピーディーに社会的信用力を得ることができます。
先代の頃からオープンな経営を心がけ、上場企業に準ずる内部統制やガバナンスの下地が整っていたことも、予定通りに上場できた大きな要因ですね。
働くを通して幸せに 社会性と経済性の両立
《長野》: 社員の方々に対して、会社としてどのような思いを持っていらっしゃいますか。
《小林さん》: 会社はビジョン達成のために存在しますが、それと同時に社員一人ひとりに働くを通して幸せになってほしいと強く願っています。そこでD&Iプロミスという約束を掲げ、意思と挑戦と成長を大切にする環境を作ることを約束しています。
《長野》: 意思を持つことを一番大切にされているのですね。
《小林さん》: はい。自分の意思をしっかり持って発信することが第一歩です。意思があれば、たとえライフステージの変化で働きづらくなっても、会社として新しい制度を作ってでも働き続けられる環境を整えられます。
本気で挑戦するからこそ本当の成長が得られますし、もし卒業することになっても、うちの会社で働いていたことを誇りに思えるような組織にしたいですね。
《長野》: 社会課題の解決とビジネスの両立についてはどのようにお考えですか。
《小林さん》: これからのAI時代においては、ただの能力や経済的な観点だけでなく、社会課題の解決にどれだけ本気で取り組めるかが重要になります。
社会性と経済性をしっかりと両立させ、世の中にインパクトを出していく。そういった両方ができる人材こそが、市場価値を高めていけると考えています。
幼少期の原体験と若手経営者へのメッセージ
《長野》: 小林さんのそのブレない芯の強さは、どのような幼少期の経験から形成されたのでしょうか。
《小林さん》: 金沢の兼業農家で、祖父母を含めた6人家族で育ちました。地方公務員だった父の影響がすごく強いですね。休みの日に都市開発の現場に連れて行ってもらい、誇りを持って仕事をする父の背中を見て育ちました。また、目上の人への敬意を厳しく教えられたことも今の自分に活きています。
《長野》: ご兄弟はいらっしゃるのですか。
《小林さん》: 兄がいます。父は古い家の長男として家を守る義務があったので、次男の私にはずっと好きに生きろと言ってくれていました。自由に挑戦させてもらったからこそ、ビジネスの世界で思い切りやり切ることが自分の役割だと感じていますし、それが親への恩返しになると思っています。
不器用なタイプですが、バスケやダンスで粘り強く努力して成果を出せた経験が、今のしぶとさに繋がっていると思います。
《長野》: 最後に、これから経営を目指す若手やビジネスパーソンに向けて、アドバイスをお願いできますか。
《小林さん》: 選り好みせずに、自分のアンテナに触れるものは全部やることです。頼まれ事は試され事だと思って、断らない姿勢を持つことが大切ですね。
結果的に予定が重なってダブルブッキングやトリプルブッキングになることもあります。ただ、そうなった時にこそ、どうすれば両方実現できるかを考える工夫が生まれます。
《長野》: 限界を決めずに挑戦し続けることが成長に繋がるのですね。
《小林さん》: はい。自分の可能性や時間にフィルターをかけてしまうと、成長も鈍化してしまいます。仕事の時だけでなく、日常生活の中から常に時間あたりの価値を高める思考を持つことが重要です。
経営者になること自体は誰でもできますが、その先で何を成し遂げたいかが明確でなければ、本当の意味で経営者にはなれないと思います。
《長野》: 今日のお話は本当に心に刺さりました。世の中の働く人や悩んでいる経営者にとって、役立つヒントがたくさん詰まっていたと思います。本日は貴重なお話をありがとうございました。
《小林さん》: こちらこそ、ありがとうございました。
編集後記
同い年ということもあり、非常にリラックスした雰囲気でスタートした今回のインタビュー。先代の急逝という予期せぬ事態に直面しながらも、逃げることなく責任を背負い、自身の使命を見つめ直して上場まで導いた小林社長の言葉には、確かな覚悟と重みがありました。
社員の幸せを第一に考え、社会課題解決とビジネスの両立を目指す姿勢は、これからの時代に求められる真のリーダー像そのものです。「頼まれ事は試され事」という言葉を胸に、私自身も限界を決めずに挑戦し続けたいと強く思わされる、非常に学びの多い時間となりました。
プロフィール
小林鉄郎 株式会社D&I 代表取締役。 石川県金沢市出身。関西の大学を卒業後、上京。先代社長のもとで長年経験を積み、2021年に代表取締役に就任。潜在労働者の活躍プラットフォーム構築をビジョンに掲げ、上場を決意してからわずか1年半となる2025年2月にプロマーケットへの上場を実現。社会課題解決と経済性の両立を目指し、社員が誇りを持てる組織づくりに尽力している。
長野憲次 株式会社アスリート式 代表取締役。元プロボクサーとしての経験を活かし、引退後はアスリートのキャリア支援事業を展開。スポーツを通じた企業向けのメンタル研修や採用支援を手がけながら、本メディア「戦う経営者図鑑」を通じて、挑戦を続ける経営者のリアルな声を若手ビジネスパーソンに届けている。



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