死ぬ気で生きるか、死んだように生きるか。元王者×起業家 対談
- nagano
- 1月21日
- 読了時間: 8分
更新日:1月21日

プロローグ:揺れる大地、揺るがない意志
2026年1月6日。島根県を震源とする大きな揺れが、対談現場を襲いました。画面が激しく揺れ、緊迫した空気が走ります。しかし、画面の中の二人は、ただ静かに状況を見据えていました。
「ああ、揺れてますね」 「島根ですね。これ、揺れすぎとるわ……」
床が激しく揺れ、一時騒然となる現場。 しかし、秋川さんは、慌てることなく静かにカメラを見据えていました。
その冷静な反応の裏には、10歳で友人の死を経験し、「命があることは当たり前ではない」という事実と向き合い続けてきた、彼なりの強固なバックボーンがありました。
本記事は、表面的な成功ストーリーではありません。 幾多の挫折や孤独を乗り越え、独自の経営哲学に辿り着いた株式会社夢とありがとう・秋川俊光氏と、元世界王者・多田悦子氏による、本音の対談記録です。
1. 10歳で知った「命の期限」と、自分を追い込む狂気

多田: 秋川さんのストーリーで一番衝撃を受けたのが、学生時代に起業を決意して、27歳までに1,000万円という資金を貯めると決意されたのですよね。普通なら途中で折れると思うんです。なぜ、そこまで自分を追い込めたんですか?
秋川: 実は、入り口はすごく単純なんです。 当時は株式会社を作るのに「資本金が1,000万円必要」という法律があったんですよ。本を読んだら「会社を作る=1,000万円いる」と書いてあった。「だったら貯めるしかないな」と。
家族や子供もいたので、生活資金も手元に残しながらなんとか会社設立に至りました。会社設立日が、僕の26歳の誕生日なんです。
多田: 目標の27歳より1年早く達成できたのですね…すごい行動力です!その行動力の根底には、もっと深い何かがあったんじゃないですか?
秋川: ……そうですね。 根底にあるのは、10歳の時の原体験かもしれません。僕は小学生の時、一番仲の良かった友人を目の前で亡くしているんです。
「正しいことをしていても、人は死ぬ」という理不尽
秋川: 公園の遊具が倒れてきて、昨日まで一緒に笑っていた彼が、一瞬でいなくなってしまった。それは全国ニュースにもなるような大きな事故で、学校にはメディアが殺到しました。 その時、子供ながらに強烈に突きつけられたんです。
「命があるのは当たり前じゃない。人は明日、急にいなくなるかもしれないんだ」
多田: 10歳でその事実に直面するのは、あまりに過酷ですね……。
秋川: ええ。でもそのおかげで、僕の中で「時間」に対する感覚が決定的に変わりました。大人たちはよく「いつかやりたい」って言いますよね。でも僕には、その言葉がすごく危ういものに聞こえるんです。「いつか」なんて、明日が絶対に来ると信じている人の甘えでしかない。
彼が生きたかった明日を、僕たちは生きている。 だから、「1,000万円必要だ」という壁が現れた時も、迷っている暇はなかったんです。
「死」を意識したからこそ、「生」が輝いた
秋川: 「お金が貯まったら」とか「準備ができたら」なんて言っていたら、その前に人生が終わってしまうかもしれない。
だから、あの時の1,000万円は単なる開業資金ではありませんでした。 「限られた時間の中で、お前は何を成し遂げるんだ?」という、人生からの問いかけに対する、僕なりの回答だったんだと思います。
多田: なるほど……。 「死」というゴールを強烈に意識しているからこそ、逆説的に今の「生」が爆発的なエネルギーを持っているんですね。秋川さんが、単なる飲食店の経営者ではなく、まるで教育者のように「人の成長」や「夢」にこだわり続ける理由が、やっと分かった気がします。
2. 人生の三つの坂。「3,000円の黒字」が僕を救った

多田: 起業してから、もうダメだと思うような「ピンチ」はありましたか?
秋川: 経営には三つの坂があります。「上り坂」「下り坂」、そして……「まさか」です。僕にとっての「まさか」はコロナでした。自分がコントロールできない状況に追い込まれ、リアルに「これがうつ病か」と思うような状態にもなりました。
秋川: でも、その時僕を救ったのは、20代の頃に味わった地獄のような経験でした。
人件費が出せないから、深夜3時まで一人で山のような皿を洗い、客席の椅子を並べて店で寝泊まりする毎日。休みもプライドも全部捨てて、必死にもがいて……ようやく出した「3,000円の黒字」。あの時の、指の痛みと震えるような喜びは一生忘れません。あの原体験があるから、「またあそこからやり直せばいい」と腹を括れたんです。
多田: 3,000円の黒字……震えますね。でもそういった原体験って本当に後から役に立ちますよね。
私もトリニダード・トバゴでの世界戦で、控え室がトイレ、気温40度という地獄のような嫌がらせを味わいました。でも、そこで日本の当たり前が当たり前じゃないんだと。日常の些細な事にも感謝できるようになりました。
秋川: それはすごい体験をされましたね……
3. 「夢とありがとう」で地域を元気に。秋川俊光氏が見据える未来

多田: 今や売上をコロナ前の2倍にまで拡大されていますが、秋川さんがその先に見据えている「景色」について教えてください。
秋川: 僕は「人の魅力で街を元気に」という理念を掲げていますが、今、飲食業界は非常に大きな課題に直面しています。四国の全人口(約350万人)よりも多い、400万人もの人々が携わっている巨大な業界なのに、所得が低かったり労働環境が悪かったりする。このままでは、飲食店という存在自体が衰退してしまう。
秋川: 僕は、この400万人の業界全体の「底上げ」をしたいんです。
そのために、「食団連(日本飲食団体連合会)」などの団体活動を通じて、現場の声を政治に届ける活動もしています。愛媛県でも団体を立ち上げ、「103万の壁」や手数料問題などについて、少しでも現場の声が届くようにと動いています。
多田: 一社だけでなく、業界全体のために動かれているんですね。
秋川: ええ。それと同時に、社内では「教育」を何より大切にしています。 極端に言えば、うちの会社は「学校」なんです。 ここに入ってもらうこと自体が「教育」であり、社員には「店長」という経験を通じて人間的に成長してほしい。
多田: 会社が学校、ですか。
秋川: そうです。我が社から、学校の生徒さんが卒業していくように、ここで働いたスタッフたちがどんどんどんどん成長して、地域や社会で活躍していってほしい。店長が変われば、店は劇的に変わる。その「視座が変わる瞬間」を一人でも多くの若者に味わってほしいですね。
多田: 視座を高めて経営をしていく中で、一番難しいのは「信頼関係」の構築だと思います。秋川さんが信頼を得るために最も意識していることは何ですか?
秋川: 一言で言うなら、「スピード」ですね。 信頼を獲得するために一番必要なもの、それはスピードです。これに尽きます。
多田: スピード、ですか。でも、頭では分かっていても、なかなか即断即決できない人が多い気がします。
秋川: そうなんです。なぜスピードが落ちるかというと、迷ったり、失敗を恐れて自分を守ろうとしたりするからですよね。だからこそ、その根底になければならないのが、我が社のバリューの1丁目1番地である「自分が自分を好きになること」なんです。
多田: 「自分を好きになる」ことが、仕事のスピードにつながるんですか?
秋川: つながります。多くの日本人は自己肯定感が低く、「今のままじゃダメだ」という自己否定からスタートしがちです。 でも、自分を否定したままでは、失敗した時に「やっぱり自分はダメだ」と傷つくのが怖いから、決断が遅れるんです。
秋川: だからマインドセットを変えないといけない。「ダメだから頑張る」のではなく、「今も幸せだ。でも、より幸せになろう(より良く)」と考える。
まず今の自分を肯定し、満たされた状態を作る。 この土台さえあれば、人は恐れずに挑戦でき、結果として迷いが消え、圧倒的なスピードと信頼を生み出せるようになると信じています。
4. 今、キャリアで悩んでいるあなたへ贈るメッセージ

多田: 今キャリアで悩んでる人や、人生で迷いがある人にメッセージいただいてもいいですか?
秋川:「世界を見ておいで」 と言いたいですね。そして、「どこへ行っても社会から求められる人になってほしい」 と思います。
僕は意図的に一人で旅に出ます。つい先日もネパールやバンコクへ行ってきました。
多田: ネパールにバンコクですか! かなり刺激的な旅ですね(笑)。
秋川: ええ、トラブル続きでしたが(笑)。でも、旅に出て自分の価値観を一度ぶち壊した先に、本当の自分が待っているんです。
日本の「普通」がいかに当たり前じゃないかを知ること。そして、我が社で働いた経験を糧に、世界中のどこに行っても通用する、求められる人材になっていってほしいと願っています。
多田: 「当たり前」を壊し、どこでも通用する自分になる。やっぱり、動き続ける「止まらない姿勢」こそが、悩みに対する一番の答えかもしれませんね。
秋川: 立ち止まってる暇はないですから。これからも新しい自分に出会い続けていきます。
対談を終えて
秋川さんと多田さんの話は、決して「特別な人の成功談」ではありません。二人とも、何度も折れかけた人たちです。 もしあなたが今、何かに悩んでいるなら、今日この瞬間からやってみてください。
「いつか」を捨て、夢に「日付」を書き込む。 今しんどいことがあるなら、「最高のネタになる」と笑い飛ばそう。 鏡を見て、今日一日生き抜いた自分を一度だけ褒める。 人生は、いつだって「今」この瞬間から逆転できます。
【今回のゲスト】 秋川 俊光(あきかわ としみつ) 株式会社夢とありがとう 代表取締役社長。
【インタビュアー】 多田 悦子(ただ えつこ) 元ボクシング世界3団体王者。



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