【ユニークな採用・キャリア論】モヒカン頭の焼鳥屋から年商数十億へ。動物園経営と無期限内定の戦略|株式会社アルプス 金丸社長
更新日:9月23日

はじめに
「セカンドキャリア」という言葉が、アスリートにとって重くのしかかる現代。 しかし、その悩みはアスリートだけのものではありません。「働くこと」に迷いを感じている多くの若者にも共通する課題です。
今回、元プロボクサーであり、現在はアスリートのキャリア支援を行う私、長野憲次が、ある一人の経営者を訪ねました。
山梨県を拠点に高速道路のSA運営などを手掛ける、株式会社アルプス 代表取締役社長、金丸滋さんです。
「イケオジコンテスト」で優勝するほどのオーラを放つ金丸社長ですが、その経歴はまさに異色。 元NECの営業マンから、六本木でモヒカン頭の焼き鳥屋店主へ、そして現在の社長業へ。
「組織は動物園でいい」「来るもの拒まず去るもの追わず」と語る金丸さんの経営哲学には、キャリアに悩むすべての人の背中を押すヒントが詰まっていました。
1. 「モヒカン」から始まった経営者への道
《長野》:金丸さんは、もともと経営者を目指されていたのですか?
金丸さん(以下、金丸): 全くそんなことないんですよ。 今の会社は血縁者が創業した会社ですが、そこに入るつもりはなくて。高校卒業後に東京に出て、NECで営業をしていました。でも飽きちゃって(笑)。
その後、ぶらぶら旅をして、気づいたら六本木で焼き鳥屋のマスターをしていました。しかも当時はモヒカン頭で。
《長野》:ええっ、モヒカンですか(笑)。そこからどうして今の会社へ?
《金丸》:30歳を前にして「モヒカンで30歳はまずいな、人生考え直そう」と。 ちょうどその頃、実家の会社(アルプス)が高速道路以外の新規事業を立ち上げるタイミングで、「面白そうだな」と思って2004年に入社しました。
《長野》:まさに「流れに乗って」こられたんですね。 金丸さんの発信を見ていると「働く=ワクワク」というメッセージを感じます。それはご自身の経験からですか?
《金丸》:そうですね。人生の3分の2は仕事の時間。それがつまらなかったら人生自体がつまらないですよね。
NEC時代の最初の上司が「明るく楽しく、プロとして厳しく」という人だったんです。その影響と、自分の生まれ持った性格が融合して、「楽天的なチャレンジ人間」が出来上がった感じです。
2. 目指す組織は「動物園」。ゾウもペンギンもいていい
《長野》:御社の採用についてお聞きしたいのですが、「こういう人に来てほしい」というハードルはあるんですか?
《金丸》:全く設けてないですね。応募してきた人を断ったことはないんじゃないかな(笑)。
僕はよく目指す組織像は動物園だと言っています。 警察犬のような規律正しいシェパードばかりを集めるんじゃなくて、ゾウもいればペンギンもライオンもいる。それぞれの個性や得意なことは違うままでいいんです。
《長野》:動物園、ですか。
《金丸》:はい。目指す「山の頂上」だけは共有して、そこへの登り方はそれぞれのやり方でいい。 ゾウさんは登れなくても、転がり落ちてきた人を支える役目があるかもしれない。バラバラじゃ困るけど、行き先さえ合っていれば、個性はそのままでいいんです。
3. アスリートの「踏ん張り」と「無期限内定」
《長野》:私たちは引退後のアスリートのキャリア支援をしていますが、金丸さんから見てアスリート人材の可能性はどう感じますか?
《金丸》:うちには箱根駅伝を走った人や甲子園に出た人がたまたま入社したりしますが、やっぱり踏ん張りが効きますよね。
スポーツをある程度やりきった人たちっていうのは、最後の最後で粘れる。NEC時代も「スポーツ人材採用」の世代がいて、30年経った今、結構活躍しているんですよ。
《長野》:そう言っていただけると心強いです。 ただ、アスリートの中には「将来は自分の店を持ちたい」「独立したい」という夢を持っていて、そのための修行として働きたいという人もいます。そういった人材はどうでしょうか?
《金丸》:全然問題ないです。実際にうちから独立して店を持った子も4、5人いますよ。
むしろ、学生相手には無期限の内定を出したりしています。 「とりあえず大企業に行って修行しておいで。5年後でも10年後でも、戻ってきたらこの内定証書は有効だから」って。
《長野》:「無期限内定」ですか!? それはすごい……。
《金丸》:大企業で研修を受けて、社会人として成長してから戻ってきてくれたら、教育コストもかからないし最高じゃないですか(笑)。「勝手に教育アウトソーシング」なんて言ってますけど。
独立したいというアスリートも同じです。3年で独立したいなら、「じゃあその3年で頑張ろうぜ」と受け入れます。 もし失敗したら戻ってくればいい。来るもの拒まず、去るもの追わずです。
4. 泥臭く「汗をかく」ことの価値
《長野》:アスリートはいきなり知識だけで飲食店を出して失敗することも多いです。金丸さんのような環境で「修行」できるのは本当にありがたいです。
《金丸》:うちのような商売は、1杯売って20円の利益を積み上げるような「汗をかく」仕事です。
昔はコンサルタントのように知識を売る仕事に憧れた時期もありましたが、やっぱり自分は「汗をかきたい」んだなと気づきました。 社長の僕自身、社外のイベントで玉ねぎスープを売ったりしてますからね。
《長野》:社長自らですか!その「行動する背中」を見ているからこそ、社員の皆さんも挑戦しやすいんでしょうね。
《金丸》:コンサルにお金を払ってノウハウを買うのではなく、現場で失敗して、立ち上がって成長する。それを我慢して見守るのが僕のマネジメントです。
アスリートの方々も、プロになれたかなれなかったかは関係なく、一つのことに打ち込んだ経験は必ず活きる。 もし道に迷っているなら、うちのような「動物園」で、自分らしく汗をかくのも一つの選択肢だと思いますよ。
編集後記
インタビューを終えて感じたのは、金丸社長の圧倒的な「器の大きさ」でした。
私自身、ボクシング引退後にキャリアでつまずいた経験があります。「環境のせい」にしていた時期もありましたが、もし当時、金丸さんのような経営者に出会っていたら、もっと早く次のステップへ踏み出せていたかもしれません。
「失敗してもいい。戻ってきてもいい。」
そんな心理的安全性が担保された「動物園」のような会社だからこそ、元アスリートも、そしてこれからのキャリアに悩む若者たちも、安心して「自分らしい挑戦」ができるのだと感じました。
アスリートの目で読む
元アスリートの視点から、この記事の読みどころをスポーツにたとえて解説します。
■ 無期限内定は「期限付き移籍」の発想
「大企業で修行しておいで。5年後でも10年後でも、戻ってきたら内定は有効」。サッカーで、若手を他クラブに期限付きで送り出し、試合経験を積ませてから呼び戻すのと同じ仕組みです。育成は外で積んでもらいながら、選手との関係は切らない。金丸さんが「勝手に教育アウトソーシング」と笑うのは、まさにこの点です。
■ 「動物園」は、ポジションの違う11人
「シェパードばかり集めない。ゾウもペンギンもいていい」。サッカーでも、11人全員がストライカーのチームは勝てません。ゴールキーパーとフォワードに同じ役割を求めないように、目指すゴールだけを共有して役割は分ける。金丸さんの組織論は、チームの編成そのものです。
(戦う経営者図鑑 編集部)
取材協力: 株式会社アルプス 代表取締役社長 金丸 滋 様
インタビュアー: 元プロボクサー 長野 憲次



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