「50歳で社長を辞めて、職人に戻る」元サッカー少年が描く、日本の庭とキャリアの新しい地図
- nagano
- 1月17日
- 読了時間: 6分

「プロになれなかった」 「引退後の道が見えない」
多くのアスリートが直面する、セカンドキャリアの壁 。
しかし、競技で培ったその情熱は、フィールドを変えれば大きな武器になります。
今回は、サッカーの名門・青森山田高校出身。 現在は造園業の経営者として世界を視野に入れている、有限会社わかな造園 代表取締役・若菜義大さんにお話を伺いました 。
インタビュアーは、元プロボクサーで現在はアスリートのキャリア支援などを行う長野憲次です 。
二人が語り合う、「やりきる力」と「働くことの本質」とは。

プロの壁を知った18歳。「感謝」が次のキャリアを開いた
長野: 若菜さんは、あのサッカーの名門・青森山田高校のご出身なんですよね 。 今の造園のお仕事には、どういった経緯で進まれたんですか?
若菜: 実は僕も、プロになりたかった口なんですよ。本当にプロを目指してやっていました 。
当時、青森山田として初めて全国ベスト4まで行ったんです。 自分の中である程度の結果が出て満足したのと同時に、プロの世界とはレベルが違うと思い知らされて 。
そこで湧き上がってきた感情が、**「両親への感謝」**だったんです 。
長野: 感謝、ですか。高校卒業のタイミングでそこに気づけるのは凄いです 。
若菜: 僕はブラジル留学もさせてもらっているし、両親がダメだと言ったら青森山田にも行けなかった 。
その感謝があったので、「じゃあ家業である両親の手伝いでもできればいいか」という気持ちでこの世界に入ったのがきっかけです 。
長野: 最初は「造園がやりたい!」という強い情熱があったわけではなかったんですね 。
若菜: そうです。でも、きっかけは何であれ、18歳の時にサッカーを「やりきった」という経験が全てでした 。
スポーツでも勉強でも何でもいいんですが、一度「やりきって」次に進む。 その経験があったからこそ、家業の手伝いから始まった造園の仕事に、自分自身がハマっていくことができました 。
今では、ゼロから生み出してお客さんを感動させることができるこの仕事が、面白くて仕方ないですね 。
日本の庭を世界へ。「枯山水」に込める美意識

長野: 現在、若菜さんは日本の庭園文化を海外に広める活動もされていますよね 。
若菜: ええ。国内では残念ながら、伝統的な日本庭園のニーズは減っています 。 今は人工芝やブロック積みといった、実用的なお庭が中心です 。
でも、海外の方と話をすると、みんな「日本庭園のニーズはある」って言うんですよ 。 実際にいろんな国の方にヒアリングしましたが、ニーズがないと言った国は一つもありませんでした 。
長野: 実際に海外で庭を作られて、反応はどうですか?
若菜: ベトナムのリゾートホテルで庭を作ったんですが、いろんな国の方が感動して喜んでくれるんです 。
特に提案しているのが**「枯山水(かれさんすい)」**です 。 砂利で水を表現するという技法なんですが、こんな表現をするのは世界中探しても日本だけなんですよ 。
長野: 砂利で水を表現する……まさに芸術ですね 。 現代人は余裕がなくなっていますが、だからこそ、そういった日本庭園の「癒し」が、これからの時代、国内外問わず必要とされている気がします 。
若菜: そうなんです。 国内のニーズが変化する中で、自分が本当に作りたいもの、日本の技術が活きる場所は海外にあるんじゃないかと仮説を立てて動いています 。
「50歳で社長を降ります」生涯現役への決意
長野: 今後のビジョンについてもお聞かせください 。
若菜: 実は僕、あと7年。
50歳で事業承継をして代表取締役を降りると決めているんです 。
長野: えっ、50歳でですか? 引退されるということでしょうか 。
若菜: いえ、逆です。
完全な職人に戻るんです 。
僕は経営がやりたくて造園を始めたわけじゃなく、「こんな庭を作りたい」という職人としての思いが原点なんです 。
50歳から60歳までの10年間って、技術的にも体力的にも一番脂が乗っていて、人生で一番楽しい時期なんじゃないかと思っていて 。
その一番いい時期に、自分が本当に作りたい庭を生涯現役で作っていたい。 そのために今、会社を組織化して準備を進めています 。
長野: 経営者からプレイヤーに戻るために、今経営をしている。 その生き方はすごくかっこいいですね。
アスリートのセカンドキャリアとしての「造園」
長野: 私が取り組んでいるアスリートのセカンドキャリア支援についてもお話しさせてください 。
スポーツに打ち込んできた人材は、体力もありますし、何より一つのことに打ち込む力があります。 造園業との親和性は高いと思うのですが、いかがでしょうか?
若菜: 親和性はすごくあると思いますよ。 今の時代、最初から「造園やりたい」って入ってくる若者は少なくて、ほとんどが転職組です 。
長野: 実は私のボクサー仲間にも造園のアルバイトをしている人間がいて、「体力を使う仕事だけど、それがトレーニングにもなって楽しい」と言っていました 。
若菜: それはいいですね(笑)。
うちは今の現場仕事、例えば人工芝やブロック積みといった仕事も多いですが、そこから技術や知識を積み上げていけば、将来的に日本庭園を作るような仕事にも繋がっていきます 。
雇用に関しては、育成コストも含めて真剣に考えないといけませんが、元気があって体力があって、コミュニケーションが取れる方なら、前向きにお会いしたいですね 。
長野: ありがとうございます。 元アスリートが、日本の伝統文化を背負って世界で活躍する。そんな未来が作れたら最高ですね。
【編集後記】
「経営者として会社を大きくすること」がゴールではなく、「50代を最高の職人として生きること」をゴールに置く若菜さんの生き方 。
これは、キャリアに悩む多くの人にとって一つの指針になるのではないでしょうか。
一度何かを「やりきった」経験は、必ず次のステージで活きてくる 。 フィールドは違えど、世界を相手に「日本の美」で勝負する若菜さんの挑戦は、まだ始まったばかりです。
■ プロフィール
若菜 義大(わかな よしひろ) 有限会社わかな造園 代表取締役。 青森山田高校サッカー部出身。家業の造園会社に入社後、代表に就任。「癒しと感動」を理念に掲げ、現在はベトナムなど海外での日本庭園作庭にも注力している 。



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