スポーツの情熱と法務の融合。異色の弁護士が目指すもの

若くして独立を果たし、現在はプロ野球の公認代理人としても活動の幅を広げる弁護士法人フォルティス法律事務所代表弁護士の豊田大将。
そのスマートで知的な肩書きとは裏腹に、彼の根底に流れているのは泥まみれの『雑草魂』だ。高校時代、レギュラーを目指し、片道10キロの道のりを自転車で駆け抜け、周囲に司法試験を目指すと宣言したときには失笑を浴びた。
しかし、彼はその悔しさをすべて前へ進むための強烈なエネルギーへと変換してきた。綺麗事だけでは生き残れない現代のビジネスにおいて、逆境をどう乗り越え、自らの道を切り拓いていくのか。トップアスリートとしての経験を持つインタビュアーの中村航司が、若き気鋭の弁護士の『飾らない生存戦略』に迫った。
【中村】 本日はよろしくお願いいたします。同世代として第一線で活躍されている弁護士の方とお話しできるのを楽しみにしていました。プロ野球の公認代理人としての活動も進められているとのことですが、スポーツの領域にここまで強い思いを持たれている背景には、ご自身のスポーツ経験が大きく影響しているのでしょうか。
【豊田さん】 よろしくお願いいたします。そうですね、幼い頃から高校までずっと野球一筋で、プロ野球選手になることを夢見る純粋な野球少年でした。平日の夕方6時になれば親がスカパーで野球中継を流し、その横でずっとバットを振っているような毎日です。ただ、当時の自分は将来弁護士になるなんて、夢にも思っていませんでした。
【中村】 そこまでの野球少年が、どのような転機で法律の世界、しかも最難関と言われる司法試験へと舵を切ったのでしょうか。非常に興味深いです。
【豊田さん】 大きな転機は、中学3年生の時に起きたリーマン・ショックでした。社会全体が不安定になる中、親からは『手に職をつけるために理系に進みなさい』と強く勧められました。
親心からのアドバイスだと理解はしていましたが、親の敷いたレールの上を一生歩き続けることへの強い反発心が芽生えたんです。だからこそ、あえて文系の道を選ぶと宣言しました。
【中村】 ご両親、特に厳格なお父様からの反対を押し切るのは、かなりの覚悟が必要だったのではないですか。
【豊田さん】 私の父は一級建築士で、地元でも名の知れた厳しい父親でした。だからこそ、『親に負けたくない』『親以上の資格を取ってやる』という闘志に火がついたんです。調べていくうちに、文系における国家試験の最高峰が司法試験だと知りました。
高校の先生から関西大学の法学部に進めばその道が開けると聞き、迷わずそこを目指すことに決めました。親に啖呵を切った手前、もう後戻りできないというプレッシャーを自分自身に背負わせた形です。
片道10キロの自転車通学。失笑を力に変えた生存戦略
【中村】 自らを追い込む環境をあえて作ったのですね。とはいえ、弁護士になるという目標は非常に中長期的なもので、モチベーションの維持が難しい側面もあります。途中で心が折れそうになることはありませんでしたか。
【豊田さん】 実は、私の根底にある『負けん気』が培われたのは、高校時代の野球部での経験なんです。当時の私は体重が50キロにも満たない小柄な体格で、30人以上いる部員の中でずっとベンチにも入れない補欠でした。
秋の大会も、春の大会もスタンドで応援する日々。それがたまらなく悔しくて、最後の夏の大会はどうしてもベンチに入りたくて、足腰を鍛えるために毎日片道10キロの道のりを自転車で通学し始めたんです。
【中村】 片道10キロですか。毎日の部活の前後となると、相当な過酷さですね。周囲の反応はどうだったのでしょうか。
【豊田さん】 周りからは『頭がおかしいんじゃないか』と冷ややかな目で見られていました。でも、私には背番号をもらうという明確な目標がありました。同じポジションだった親友と利害関係が一致し、互いの弱点である守備を克服するために、テスト期間中もそっちのけで2人で泥臭く自主練を重ねました。
その結果、最後の夏に彼が17番、私が18番という背番号を監督から受け取ることができたんです。自分の中で、不可能だと思われていたことをやり遂げた大きな成功体験でした。
【中村】 自ら戦略を立てて、泥臭く行動し、結果を掴み取った。まさに今の弁護士としてのアプローチに通じるものがありますね。
【豊田さん】 そうかもしれません。ただ、高校の野球部の卒部式で、将来の夢として『大学に行って法律を学び、弁護士になります』と宣言したとき、会場にいた父兄たちから失笑が漏れたんです。多くの人が地元の企業への就職や、公務員試験を受けるような学校だったので私のような人間が珍しかったですし、私がそういう高い目標を掲げる器ではないと思われていたのでしょう。
でも、その生温かい笑い声を聞いた瞬間、私の中で『絶対にこの人たちの目を変えてやる』という強烈なエネルギーが湧き上がりました。あの時の失笑が、大学4年間の過酷な勉強を乗り切る最大の原動力になったのは間違いありません。
バッジを外した時に人が残るか。依頼者ファーストの真髄
【中村】 周囲のネガティブな反応すらも燃料にして這い上がってきたのですね。弁護士になられてからも、その『常識を疑う姿勢』は貫かれているように感じます。独立も非常に早かったと伺っています。
【豊田さん】 弁護士登録と同時に、固定給の一切ない完全歩合制の事務所に飛び込みました。親が自営業だったこともあり、すべては自己責任だというマインドが刷り込まれていたので、固定給に目が眩んで自分の力が数字として見えてこない環境で勘違いをする方が怖かったんです。
司法試験の予備校講師としても収入を確保しつつ、1年目から個人の人的な繋がりでご依頼を積極的に受けていきました。怖いもの知らずで、1回の表からノーアウト満塁のピンチをどうくぐり抜けるか、みたいな毎日でしたね。
【中村】 現在、弁護士業界も広告競争やAIの台頭で大きなゲームチェンジが起きていますが、その中で弁護士法人フォルティス法律事務所が目指す方向性について教えてください。
【豊田さん】 今の業界は、事務所の利益を優先して依頼者を二の次にするような風潮が一部で見られ、弁護士の不祥事も増えています。私はそれが本当に許せないんです。AIに頼れば何とかなるという風潮もありますが、素人の方がAIを使って得た回答は、現場の複雑な事情からピントがずれていることがほとんどです。
だからこそ、私は現場に足を運びます。足元が悪い依頼者がいれば、ご依頼者様のご自宅や近くのカフェまでこちらから出向きます。
【中村】 徹底した現場主義ですね。組織としても規模の拡大だけを追うのではないと。
【豊田さん】 はい。大手事務所の単純な規模拡大を真似するつもりはありません。全国に拠点を置くにしても、私が徹底的にスクリーニングした人間だけを配置する『強豪校のような少数精鋭の組織』か、志を同じくする独立した弁護士たちが独自のカラーを持ちながら連携する『ネットワーク型の組織』を目指しています。
事務所に所属している他の弁護士にも常に言っているのは、『弁護士バッジを外した瞬間に人が去っていく人間には絶対になるな』ということです。資格ではなく、人格で信頼される組織でありたいと思っています。
アスリートのセコンドとして。出る杭を伸ばす社会へ
【中村】 資格という鎧に頼らず、一人の人間として勝負する。スポーツの世界で結果を残してきた人間にも通じる非常に強い覚悟を感じます。スポーツ界への恩返しという点では、どのようなビジョンを描かれていますか。
【豊田さん】 スポーツ選手は、結果を出して急に有名になった途端、怪しい投資話や契約の罠に引きずり込まれるリスクと常に隣り合わせです。引退後に税金が払えずに苦しむ選手も少なくありません。そうしたトラブルが起きてから対処するのではなく、現役時代からカジュアルに弁護士と繋がり、セカンドキャリアも含めて未然に防ぐ体制を作りたいんです。
将来ある若き才能が、法的な知識不足のせいで足元をすくわれて潰れていくのを指をくわえて見ているのは、絶対に嫌なんです。
【中村】 素晴らしいですね。豊田さんのその熱量が、多くのアスリートの人生を守る大きな盾になると確信しています。最後に、日々戦い続けるビジネスパーソンへ向けての思いを聞かせてください。
【豊田さん】 私は決してエリートではありません。常にギリギリのところで首の皮一枚で繋がり、泥臭くやってきた人間です。ただ、自分の中で『こうすればいけるかもしれない』という筋道さえ立てば、周りが無理だと言っても諦めずに挑み続けてきました。
今の日本は出る杭を打つ空気が蔓延していますが、私は青臭い夢を真正面から語り、新しい常識を作っていきたい。私が関わることで、この社会が少しでも活気あるものになったと生きた証を残せるよう、これからも戦い続けます。
編集後記
スマートなスーツに身を包み、流暢に言葉を紡ぐ豊田弁護士。しかし、対話を深めるほどに、その内側には高校球児がグラウンドで見せるような、土埃にまみれた熱い情熱が煮えたぎっているのを感じた。
片道10キロの自転車通学。周囲の失笑。固定給ゼロからの独立。彼が歩んできた道は、決して平坦なエリートコースではない。しかし、彼は周囲からの評価や常識という壁にぶつかるたび、それを打ち砕くための緻密な戦略を練り、最後は圧倒的な行動力でねじ伏せてきた。
『弁護士バッジを外した時に人が残るか』。この言葉には、肩書きや見栄に頼らず、己の人間力一つで世の中と勝負するという強烈な覚悟が込められている。今、大きな壁に直面し、孤独の中で戦っている経営者たちへ。周囲の失笑や逆風は、すべて自分を次のステージへ押し上げるための強烈な燃料になる。豊田氏の歩んだ軌跡は、泥臭く戦うことの尊さを私たちに力強く教えてくれている。
プロフィール
【ゲスト:豊田大将】 弁護士法人フォルティス法律事務所代表弁護士。関西大学法学部を卒業後、神戸大学法科大学院修了後に司法試験合格。学生時代は野球に打ち込み、特有の『雑草魂』で数々の逆境を乗り越える。弁護士登録後、完全歩合制の環境で早期に独立。
現在はプロ野球の公認代理人に登録するなど、アスリートの法的支援やセカンドキャリアサポートに注力。依頼者ファーストを貫き、現場に足を運ぶスタイルで多くの信頼を集める若き気鋭の弁護士。
【インタビュアー:中村航司】 一般社団法人日本スポーツコミュニティ協会(縁TRANCE) 代表理事。元フィールドホッケー選手(ドイツ・ブンデスリーガ所属/元U18日本代表)。世界トップリーグでの過酷なプレー経験を持つ元トップアスリート。
引退後は、スポーツの世界で培った『限界を超えるマインドセット』と『戦略的思考』をビジネス領域に還元すべく活動。数多くの経営者やアスリートと対話を重ね、本質的な課題解決をサポートしている。



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